マルゴー地区格付け第3級で、ボルドーの中でも近年著しい品質向上を見せている「シャトー・ディッサン」。その歴史は12世紀頃に遡り、イギリス王ヘンリー2世とアリエノール妃の結婚式にこのワインが供された記録が残っています。これにちなみ、ラベル上部にはラテン語で「神のワイン、王のワイン」という言葉が掲げられています。
現存するシャトーはエスノー家によって建てられたもので、堀に囲まれた石造りの城塞風建築は中世の領主館の趣を残し、フランスの歴史的記念建造物にも指定されています。美しさでも知られ、メドック音楽祭の会場としても利用されています。
大戦後には低迷期を迎えましたが、1945年に名門ネゴシアンであるクルーズ家がシャトーを取得し、畑や設備の刷新を実施。1993年に現オーナーである3代目のエマニュエル・クルーズ氏が加わると、翌年から大規模な投資が行われ、品質は飛躍的に向上。現在ではワイン・アドヴォケイトやワイン・スペクテーターなどでも高く評価されています。
また、ラフィットやラトゥール、マルゴーといった一流シャトーも手がける醸造コンサルタント、エリック・ボワスノ氏の助言を受けており、さらなる品質向上に貢献しています。彼はシャトーごとの哲学を尊重し、その個性を最大限に引き出すスタイルで高く評価されています。そして、ディッサンの大きな特徴は、1855年の格付け以来、一切畑を買い足していないことにあります。これは格付シャトーの中でも極めて珍しく、同じ土地で長年にわたり蓄積された経験と知識がワイン造りに活かされています。
マルゴーAOCに属する畑は1644年に築かれた塀に囲まれ、シャトー・マルゴーに隣接する立地。水はけのよい砂利質土壌で、カベルネ・ソーヴィニヨンに適しています。一方、シャトー建物の反対側には粘土質の畑が広がり、ここではメルロー主体の「ムーラン・ディッサン」を生産。さらに、マルゴーの畑から車で5分ほどの場所には、オー・メドックAOCの畑も所有しており、ここでは「オー・メドック・ディッサン」が造られています。