シャトーの歴史は1760年、フランス海軍の将校ジャック・カノン氏がこの地を手にしたことから始まります。彼はこの土地の並外れたポテンシャルを見抜き、当時植えられていた穀物を取り除き、ブドウ畑へと一新。その先見の明が、今日のシャトー・カノンの礎となりました。
畑は、サン・テミリオン南西部の特に評価の高い丘陵地帯に位置し、第一特別級の多くのシャトーが集中するエリアに22haを所有。主に粘土質石灰岩からなる土壌には、緩やかな斜面にメルローを、傾斜の強い区画や砂礫質の土にはカベルネ・フランを配し、理想的なバランスを追求しています。そのワインは、気品あるアロマと凝縮した果実味、洗練された力強さを兼ね備え、熟成とともに革や杉、甘いプルーンといった深みのある香りが広がります。真の魅力が花開くのは、時間という名の熟成を経たとき。その奥行きある味わいは、多くの愛好家を魅了し続けています。
また、1996年、シャトーは有名ブランド「シャネル」のオーナーとして知られるヴェルテメール家の所有となり、世界の注目を集めました。同家はそれに先立ち、1994年にマルゴーの第2級シャトー「ローザン・セグラ」を取得。醸造設備の刷新や畑の見直しなど、大規模な品質向上への取り組んでおり、シャトー・カノンにもその手腕が継承されることとなりました。シャトー・カノンでは、セラーの改修やブドウの再植樹、畑の区画整理といった抜本的な改革が進められ、醸造環境のさらなる向上が図られました。現在は「ローザン・セグラ」と同様、かつて「ラトゥール」で腕を振るった醸造家、ジョン・コラザ氏が中心となり、その改革を牽引しています。
こうした取り組みは着実に成果を上げており、シャトー・カノンの品質と評価は近年大きく高まっています。ワイン評論家ロバート・パーカー氏も「現時点ではまだ十分な名声を得ていないが、新しいオーナーは野心的であり、将来が非常に楽しみなシャトー」と評しています。
歴史と革新が調和するシャトー・カノンは、今まさに新たな輝きを放とうとしています。熟成の魅力はもちろん、これからの進化にもぜひご注目ください。