シャトー・クーテは、ソーテルヌ地区バルサックに位置する格付け第一級の名門シャトーです。13世紀に要塞として建てられ、ワイン生産の歴史は1643年まで遡ります。クーテ領主シャルル・ル・ゲランがブドウ畑を開墾し、ソーテルヌで最も早い時期に誕生した生産者のひとつとなりました。アメリカ合衆国第3代大統領トーマス・ジェファーソンもフランス滞在中にこのワインを味わい、「バルサックにおける最高のソーテルヌ」と称賛した記録が残されています。
その後、リュール=サリュース家の所有となり、一族が手がけたシャトー・ディケムや他の名だたるシャトーとともに、世界にその名を広めました。1855年には格付けで第一級に選出され、名実ともに高い評価を得ています。20世紀にはギー家がワイナリーを受け継ぎ、導入された油圧式圧搾機は現在も現役で稼働。特別なキュヴェ「キュヴェ・マダム」もこの時代に生まれました。
1977年以降はアルザス出身のバリ家が運営を担い、畑や醸造施設の刷新。1994年にはバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社と独占販売契約を締結し、醸造面での技術支援も受けるなど、国際的な評価をさらに高めています。また、2010年には新たな挑戦として辛口白ワイン「キュヴェ・オパリー」をリリース。伝統の甘口と同じ厳格な基準で造られ、バルサックのテロワールを新たに表現するワインとして注目されています。さらに2017年には、クーテ2014がワイン・スペクテーター誌の「世界ワインTOP100」で第3位に選ばれる快挙を達成しました。
現在はフィリップ・バリ氏と姪のアライン氏が運営を行い、38.5haの畑は整備され、栽培方法や醸造施設、発酵タンク、シャトー建物の改修も進められています。こうした長年の努力と優れた管理に加え、バルサック特有の石灰質を多く含む粘土質の土壌がワインに独自の影響を与えています。そのため、隣接するソーテルヌの貴腐ワインが華やかで濃厚な印象であるのに対し、バルサックのワインはやや酸味が強く、優美でバランスの取れた味わいが特徴です。