シャトー・トロタノワは、ポムロール地区に位置し、「シャトー・ペトリュス」を手掛けるムエックス社が所有するシャトーとして知られています。
畑は18世紀半ばにジロー家が所有しましたが、分割と転売を経て現在は約7haに縮小。1953年にムエックス社が取得し、1956年の霜害ではポムロールで唯一深刻な被害を免れたことでも知られています。一時的な低迷期を経験するものの、ムエックス社の尽力によって再び名声を取り戻しています。
この歴史を支えてきた約7haの西向きの畑は、鉄分を多く含む“crasse de fer(クラス・ド・フェール)”と呼ばれる粘土質と砂利質の混合土壌です。夏には乾いて固まり、雨後にはコンクリートのように硬くなる扱いにくい土壌であることから、古いフランス語で「うんざりする」という意味から「トロタノワ」という名前になったといわれます。しかし、この土壌こそがブドウに力強さと複雑味を与え、平均樹齢35年の古樹由来の凝縮感も相まって、長期熟成にふさわしいワインを生み出します。収量は1haあたり39hlとメドック1級よりも厳しく制限され、少量生産へのこだわりが徹底されています。
さらにトロタノワの魅力を高めているのが、ペトリュスと同じ醸造チームによる管理です。そのためトロタノワはしばしばペトリュスと比較されます。メルロ比率や新樽使用率にわずかな違いこそありますが、製造過程はほぼ同様で、ペトリュスに通じる味わいをより手の届きやすい価格で楽しめることが人気の理由となっています。評論家からの評価も高く、2016年と2018年ヴィンテージはロバート・パーカーで99点を獲得。さらに2018年は、ジェームス・サックリングによる「TOP 100 WINES OF FRANCE 2021」で第2位に選ばれるなど、揺るぎない名声を確立しています。