ジャン・ルイ・ヴェルニョンは、約２世紀にわたり5世代がバトンを受け継いできた家族経営の老舗ドメーヌです。シャルドネの銘醸地ル・メニル・シュール・オジェ村に本拠を構えており、畑はメニルを中心に、オジェやアヴィーズに計5.3haを所有しています。
ヴェルニョンが飛躍的な進化を遂げたのは、2002年にクリストフ・コンスタンが醸造責任者に就任したことがきっかけです。彼は、アンセルム・セロスから影響を受けた人物であると共に、収穫期が近づくと頻繁にアンセルムと情報交換をしているといわれています。
一般に、メニルのシャルドネは鋭い酸と硬質なミネラルを備えており、飲み頃を迎えるまでに時間がかかるため、若いうちはその魅力が感じにくく、通常は酸を和らげる目的でマロラクティック発酵が行われます。しかし、ヴェルニョンのシャンパーニュは「若いうちから美味しく楽しめる」ことが最大の魅力。その秘密は、クリストフがメニルの個性を活かしながら、マロラクティック発酵を行わずともバランスが取れるほど、酸やミネラルに負けない豊かな果実味を持つ完熟ブドウを育てている点にあります。この一見相反する要素を見事に両立させることで、メニル特有のシャープな酸と硬質なミネラルに、しなやかでふくよかな果実味が寄り添う、魅力あふれるシャンパーニュが生まれているのです。
栽培にはサスティナブル農法を採用し、殺虫剤の使用は最小限。収穫はすべて手摘みで行われ、伝統的な垂直式プレスで丁寧に圧搾されます。発酵の大半はステンレスタンクで行われ、翌年6月にアッサンブラージュ、7月に全キュヴェを瓶詰め。その後、3～5年の熟成を経て、手作業によるデゴルジュマンが行われます。ドサージュは控えめで、ブドウのピュアな味わいを引き出しています。
こうして生まれるシャンパーニュを、クリストフは一言で「Salinite（塩気）」と表現。世界的に権威あるワイン品評会であるIWCではその力強いミネラル感が称賛され、WA誌では美しい酸とミネラル由来の透明感ある味わいが高く評価されています。また、著名な評論家リチャード・ジューリンからは4ツ星を獲得。品質向上にたゆまぬ努力を続けるヴェルニョンには、世界中の愛好家たちの注目がますます集まっています。
